『たむら市政だより』2025年9月号 ペットボトルの現状とマイボトルの節約効果、CO?削減効果の算出根拠

『たむら市政だより』2025年9月号 ペットボトルの現状とマイボトルの節約効果、CO?削減効果の算出根拠

2025年12月11日

『たむら市政だより』9月号の連載記事「ちょこっとエコライフ~身近な省エネを実践しよう!~」Vol. 25「マイボトルを持ち歩こう!」に記載したペットボトルの現状とマイボトルの節約効果、CO?削減効果の算出根拠について紹介いたします。

ペットボトルの現状

私たちの生活にすっかり定着しているペットボトル飲料。コンビニや自販機、スーパーで手軽に購入できるため、多くの人が日常的に利用しています。日本国内で出荷される清涼飲料用のペットボトルは年々増加傾向にあり、一般社団法人プラスチック循環利用協会*1によると、2023年度には約267億本という膨大な数が出荷されており、これを2023年10月1日時点の日本の総人口(1億2,435万2,000人)で割ると、国民1人当たり年間約215本、消費している計算になります。

*1: 一般社団法人プラスチック循環利用協会「2023年度、リデュース率28.4%、リサイクル率85.0%に―PETボトルリサイクル推進協議会―」(https://www.pwmi.or.jp/column/column-2578/)

もちろん、使い終わったペットボトルは回収?リサイクルされています。図表1は2023年度の日本におけるペットボトルの回収?リサイクル?有効利用の内訳を示したものですが、日本のペットボトルのリサイクル率は、85.0%と世界的にも高い水準にあり、さらに「ボトルtoボトル」と呼ばれる、使用済みペットボトルから再び新しいペットボトルを作る水平リサイクル率も33.7%にまで高まっています。

図表1. 2023年度 日本におけるペットボトルの回収?リサイクル?有効利用の内訳
日本におけるペットボトルの回収?リサイクル?有効利用の内訳

(注)指定PETボトルとは、容器包装リサイクル法のリサイクル区分で、PETボトルとしてリサイクルするものであり、内容物が「指定表示製品」と呼ばれる、飲料(清涼飲料、酒類、乳飲料等)、特定調味料(しょうゆ、しょうゆ加工品、みりん風調味料、食酢?調味酢、ノンオイルドレッシング)に限定される。資源有効利用促進法に定めたPETボトルの識別表示マークの表示義務がある。なお、PETボトルと同時に廃棄されるキャップやラベル、そして指定表示製品以外のPETボトルは指定PETボトルではなく、プラスチック製容器包装等の他素材のリサイクル区分、識別表示区分となる。PETボトルリサイクル推進協議会「リサイクルの進捗」(https://www.petbottle-rec.gr.jp/3r/recycle1.html)を参照。

[出典]PETボトルリサイクル推進協議会「PETボトルリサイクル年次報告書2024」16ページ「図17 回収?リサイクル?有効利用とは」(https://www.petbottle-rec.gr.jp/nenji/2024/2024.pdf)

しかし、ここで忘れてはいけないのは「リサイクル=無害」ではないという点です。回収?分別?再資源化の過程では輸送や加工のためにエネルギーを消費し、どうしてもCO?が排出されてしまいます。つまり、どんなにリサイクル率が高くても、使い捨てのペットボトル自体を減らすことが最も根本的で効果的な環境対策になるのです。

プラスチック問題の現状

現在、プラスチックに関連した環境負荷の問題は、世界的にも大きな問題となっており、皆さんも耳にする機会も増えていることかと思います。プラスチックが引き起こす環境への被害としては、主に海洋プラスチックごみ問題と地球温暖化が挙げられます。
海洋プラスチック問題について、World Economic Forum 2016の報告書*2によれば、毎年約800万トンのプラスチックごみが海洋に流出しており、2050年にはプラスチック生産量が2014年比で約4倍に増加すると予測されています。その結果、海洋中のプラスチックごみが、魚の量を上回る可能性も指摘されています。また、プラスチックは製造?廃棄?リサイクルの全過程で大量のCO?を排出するため、地球温暖化の一因ともなっています。
プラスチックは家庭でも身近な存在ですが、影響は家庭内にとどまらず、地球規模の問題です。食品の多くがプラスチック製容器に包装されている現状を踏まえると、一人ひとりの省エネ行動や環境配慮がますます重要になります。

*2:WORLD ECONOMIC FORUM, 2016 THE NEW PLASTICS ECONOMY: RETHINKING THE FUTURE OF PLASTICS (https://www3.weforum.org/docs/WEF_The_New_Plastics_Economy.pdf)p.7を参照。 (https://content.ellenmacarthurfoundation.org/m/1775fbba280fa21/original/The-New-Plastics-Economy-Rethinking-the-future-of-plastics.pdf),p.24を参照。

家庭から排出されるプラスチックについて

図表2は、家庭から排出され市町村が収集するごみ(粗大ごみを除く)の全てを対象として、環境省が実施した調査から得られた、2024年度の家庭ごみの8都市平均組成における容積比率*3です。ここから、家庭から排出されるごみの約5割はプラスチック類が占めていることがわかります。

*3: 容積比率とは、ゴミ処理や廃棄物管理において、特定の廃棄物が占める体積に対して、どの程度の密度や量があるかを示す指標である。

図表2. 2024年度8都市平均組成(容積比率)
2024年度8都市平均組成(容積比率)

[出典]環境省「容器包装廃棄物の使用?排出実態調査の概要(亚洲通_亚洲通官网¥娱乐网址6年度)」(以下のURL)より筆者作成。
(https://www.env.go.jp/recycle/yoki/c_2_research/research_R06.html) (最終閲覧日:2025年7月28日)

プラスチック?リサイクルの限界と削減の重要性

図表3は、日本における2023年度の廃プラスチックの総排出量と有効利用率の推移です。ここでは、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルをすべて含めた割合を有効利用率として計算しています。2023年度の廃プラスチックの総排出量は769万トンとなり、このうちの89.5%にあたる688万トンが有効利用されました。この有効利用率を聞くと、日本はプラスチックごみのリサイクル率が高水準であるというイメージを持つかもしれませんが、実はそのイメージは正しいとは言えません。

図表3. 2023年度廃プラスチックの総排出量?有効利用/未利用量?有効利用率の推移
2023年度廃プラスチックの総排出量?有効利用/未利用量?有効利用率の推移

[出典]一般社団法人プラスチック循環利用協会「2023年プラスチック製品の生産?廃棄?再資源化?処理処分の状況 マテリアルフロー図」(https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf2.pdf)9ページより引用。

図表4では、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルの概要をまとめたものになります。日本ではこれら3つを「リサイクル」と呼んでいますが、海外ではサーマルリサイクルを「サーマルリカバリー」と呼んでおり、リサイクルと認められていない場合が多いのです。図表3を見ると、リサイクルと分類されているもののうち71.4%がサーマルリサイクルであり、何か別の製品に使用される、生まれかわるという意味での本来のリサイクルではありません。このサーマルリサイクルを除いた、実質的な有効利用率は28.6%しかありませんので、実質的な意味での日本のプラスチック?リサイクル率は低いと言わざるを得ません。

図表4. リサイクルの種類
種類 概要
マテリアル
リサイクル
?廃棄物を製品原料として再利用。
?例えば、使用済みのペットボトルを粉砕?加工処理したのちに繊維化し、衣料を生産など。
?資源循環に直接貢献する。→サステナビリティの高いリサイクル手法。
ケミカル
リサイクル
?廃プラスチックを化学的に分解するなどして、化学原料に再生。
?例えば、使用済みのペットボトルを再生PET樹脂へと変え、原料の一部に使用しているのが、AGF(味の素)のペットボトル「フレンドリーボトル」。→原料の石油資源を年間約60%カットすることに成功。
サーマル
リサイクル
?最も多い割合を占めているサーマルリサイクルは日本独自のもの。
→廃棄物を単に焼却処理するだけでなく、焼却の際に発生するエネルギーを回収?利用する。
?焼却エネルギーを利用した発電が主であり、その焼却熱を回収して温水施設などに供給をすることもある。
?海外ではこの方法をサーマルリカバリーと呼んでおり、リサイクルとされてない場合が多い。

[出典]安藤碧「リサイクルと技術の進化で乗り越えるプラスチック海洋汚染問題」『香川大学経済政策研究』第16号、2020年3月、5~31ページを参照して筆者作成。

以上のようなプラスチック?リサイクルの限界を踏まえると、使い捨てプラスチックの排出そのものを減らす取り組みが、家庭でもできる重要なアクションになります。その中でも、もっとも実践しやすい方法が「ペットボトル飲料の購入を減らし、マイボトルを持ち歩く習慣に切り替えること」です。ここからは、マイボトルの利用が家計の節約とCO?排出量の削減にどれほど効果的なのかを、データをもとに分かりやすく紹介します。

マイボトル切り替えによる節約効果の算出根拠

清涼飲料用ペットボトルの年間出荷本数(2023年度)は約267億本で、1日当たり約6,400万本、さらに換算すると毎秒約740本ものペットボトルが出荷されていることになります。これが積み上がり、年間で200億本を超える消費に膨れあがっているのです。では、ここからもしマイボトルに切り替えたらどれくらい節約になるのか、どれくらいCO?排出量の削減になるのかを具体的に見てみましょう。
図表5は、ペットボトル飲料とマイボトル(中身を水道水やお茶で補充する利用方法)の年間コストおよびCO?排出量を比較したものです。比較にあたっては、1年間の利用回数を215回と仮定し、それぞれの「1本(500ml)当たりの価格」、および「1回当たりのCO?排出量」を基に、年間値を算出しています。
まずコスト面では、ペットボトル1本当たりの価格を150円と仮定した場合、年間コストは32,250円となります。一方、マイボトルで水道水や茶葉を利用した場合の1回当たりのコストは約2.3円で、年間495円にとどまります。このことから、マイボトルへ切り替えることで年間約3万円の節約効果が得られることがわかります。
次に環境負荷(CO?排出量)を比較すると、ペットボトル1本の製造から廃棄までに排出されるCO?量は0.119kgであり、年間では25.59kgとなります。これに対して、水道水を利用するマイボトルの1回当たり排出量は0.025kgと低く、年間でも5.38kgに抑えられます。つまり、年間で約20kgのCO?排出削減が可能であり、環境負荷の低減にも大きく寄与することがわかります。
このように、マイボトルの利用は経済的な利点に加え、環境負荷の面でも大きな効果があることがわかります。

図表5. ペットボトルとマイボトルのコストとCO?排出量比較
1本当たりの価格(円)*4
A
年間コスト(円)
B=A×215
1本当たりの
CO?排出量(kg)*5
C
年間CO?排出量(kg)
D=C×215
ペットボトル 150 32,250 0.119 25.59
マイボトル 2.3 495 0.025 5.38

*4:ペットボトルとマイボトルの価格設定は、次の通りである。ペットボトル1本(500ml)当たりの価格を150円と仮定した。マイボトル1本(500ml)当たりの価格は茶葉の価格から算出した。茶葉は、おねだんノート「香り薫るむぎ茶 ティーバッグ54袋」(https://onedannote.com/25148/)を参照し、香り薫るむぎ茶ティーバッグ54袋入(1L用ティーバッグ)(伊藤園)が税込み247円を用いて、マイボトル1回当たりの価格を、247円÷54袋÷2(500ml)=約2.3円とした。

*5:ペットボトル1本(500ml)の製造から廃棄までのCO?排出量は、いしかわプラスチックスマートキャンペーン「マイボトルで職場へGO!」(https://www.eco-partner.net/wp-content/uploads/2021/10/mybottletirasi.pdf)を参照して、約0.119kgと設定した。マイボトルに水道水を入れた場合のCO?排出量は、株式会社エコ?プラン「マイボトルとペットボトルのLCA比較を深堀り!日本全体の排出量と金額換算!」(https://www.ecology-plan.co.jp/ecotopic/31530/)を参照し、約0.025kgと設定した。

まとめ

ペットボトルは便利ですが、私たち一人ひとりの生活の中で確実に環境負荷を生み出しています。リサイクル率が高い国であっても、それだけでは地球温暖化対策に十分とは言えません。そこで「マイボトルを持ち歩く」というシンプルな習慣を取り入れることで、お財布にやさしく、地球にもやさしいライフスタイルを実現できます。日々の飲み物を買うその行動を、自分の手で淹れて持ち歩くという行動に変えてみませんか?小さな習慣の積み重ねが、未来の地球と子どもたちの暮らしを守る大きな力になります。

経営学科4年 松森